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「必要とされている実感があるだけで、人は変わる」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介ノウハウセミナーレポート後編

「必要とされている実感があるだけで、人は変わる」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介ノウハウセミナー後編

有料職業紹介事業者数は、今やセブンイレブンと並ぶほどに増加。われわれ中小の人材紹介会社が求職者に選ばれるエージェントになるには、どうするべきなのでしょうか?

 

20数年間にわたり業界をリードしてきた、転職エージェントの先駆けである森本千賀子さん(株式会社morich)。前編に続き、後編では「エージェントの価値」を中心にお話を伺いました。 

 

いかにして、自分のブランドを作るか

私たちは代行者ではなく、交渉人だと思っています。

交渉の腕の見せどころは、報酬の部分ですね。最終的に年収のやり取りのプロセスがあると思いますが、ここがエージェント価値の大きなポイントです。

まず、求職者としっかり報酬の価値観を共有しておく。今の報酬がいくらではなく、本当に細かく聞きます。ローンがあるかどうか、奥様が仕事しているかどうか、その奥様の仕事はパートなのかフルタイムなのか、世帯年収がどのぐらいか、お子さんがいるかどうか、何歳で私立なのかどうか・・・。

要はライフプランの中でどういった報酬設計が必要になるのか、「年収をどれぐらいまで下げられるか」ですね。場合によっては、蓄えも聞いたりします。それぐらい、報酬の要素は大事なファクターで、逆にそれによって選択肢がググッと広がります。

もう一つは、求職者に「入口の年収が全てじゃない」ことをしっかりとお伝えすることですね。転職エージェントのみなさんも認識されていると思いますが、大事なのは入り口でなくその先です。

上がり幅は、企業によって様々です。ストックオプション1つにとっても、考え方が全然違います。最近だと信託型ストックオプションがあったり、求職者にメリットがあるものは、逆に求人企業にアピールするよう提案してあげたり。そういう報酬の部分は、エージェントの腕の見せ所だと思っています。

入社は、あくまでスタートライン。ゴールではない。私たちのビジネスモデル上、マネタイズは、入社なのでどうしても入社して安心してしまいます。

私も2,000人以上もの転職支援をさせていただくと、中には中途退社する方もいます。だいたい、入社から3カ月から6カ月以内の早期退職だと企業に返金義務があります。返金について、我々エージェントにとっては業績的に痛いのはもちろんですが、実はそれ以上に、痛いのはマインド面です。

その交渉にも労力を使いますし、求人企業もトラウマになるんですよね。結果、次にその企業に求職者をご紹介すると、選考の難易度が必要以上に高くなることもあります。私たち転職エージェントにとっては、目に見えること以上に非常に負荷を強いられます。

定着していただくことは、私たちにとっても非常に重要です。そこで、企業様に必ずお願いしているのは、入社に向けての心構えと準備をしていただくこと。例えば、入社日の前日にできればメールを出していただいてます。「明朝、待ってます」というメール一本だけで、どれだけ求職者の方が心を打たれるか。

あとは入社当日に、三種の神器を用意しておいてくださいということ。例えば、その人専用のパソコンだったり、名刺だったり。そういう基本的なもの。

大手企業の場合は総務が手配されているかもしれませんが、中小・ベンチャー企業だと「入社してからでまあいいや」となっているところも少なくありません。求職者は当日しっかり準備されているだけで、必要とされているという実感を持てるんです。

他にも、歓迎会とか、入社された日の朝はできればあいさつする時間を作ってくださいとか。あいさつ一つあるかどうかで、その人の覚悟やケジメが違ってきたりします。入社の直前と当日、入社後にもいろんなノウハウがあります。そういうものを企業にはお伝えします。

求職者ご本人にも、しっかりと話をします。同じ業界への転職だったり、もともと取引先だったところに転職するだったり、場合によってはよく知ってる人が社内にいたとしても、必ず入社後のギャップはあるので。そこの覚悟を持っていただくやり取りというのを入社前、入社当日に連絡を入れるようにしてきました。

そしてほかに大事なことは、求職者が内定承諾をするために、なによりもスピードを大事にしていただきたいです。リクルート在籍時にあるデータを取ったのですが、だいたい1人あたり平均4〜5社ぐらい併願されているんですけど、最初に内定が出た会社に入社される確率は、なんと6割近くの数字になりました。いかにスピーディに対応して、最初に内定を出すかなんです。ある意味、期待の表れとも言います。鉄は熱いうちに打つのが鉄則です。

あとは、エージェント価値で大事なことは“ブランディング”。他の求職者や、他の企業にいかに「紹介したい」と思っていただけるか。皆さんも、いかにして自分のブランドを作れるかを意識しながら日々実践していただけるとよいのではと思います。

その象徴は人脈だったりすると思うんですが、黙って一日オフィスにいても作れないですよね。だから人脈を形成するために、いろんな場所に出かけてください。

セミナーや講演は、毎日いたるところで開催されていると思うんです。みなさんが作りたい人脈の領域を意識しながら、どんどん出かけていただきたい。そして、座席の前後左右の人とは必ず名刺交換をしてほしいです(笑)。100席ぐらいある中で横に前後にご一緒するというのは、(縁が)繋がっているということですから。

「必要とされている実感があるだけで、人は変わる」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介ノウハウセミナー後編

このビジネスの真価は、すぐには見えません

最後に、エージェントの価値について。日本の労働人口の49%が早ければ10年後、遅くとも20年以内にはAIやロボットに置き換わる可能性があるというデータもありますが、この仕事は究極です。絶対に、人が介在する価値がある仕事だと思っています。

マッチング業務や業務プロセスの一部は、便利になる機能がどんどん出てきてますので、そのあたりはツールを使っていただければ良いと思います。でも、面談は対面ですることが基本だと思っています。

電話面談とかバーチャルな面談だと、どうしても関係性が希薄になっちゃうんですね。私もzoomなどのweb会議ツールを使って面談することがあるんですが、温度が感じにくくなるんです。遠方でない場合はできるだけ、面談は対面で実施する。それが大切な仕事だと思っています。

この仕事では、自分1人で10個も20個も仕事をすることできないのですが、私を通じて転職された方が世の中で活躍することで、世の中に与えるインパクトはすごく大きいと感じています。

転職は、人生のターニングポイントです。結婚や就職と同じように、転職はその人の人生の大事なライフイベントに匹敵する大きなターニングポイントになります。そこに向き合える、本当に価値あるビジネスだと思います。

 

このビジネスの真価は、すぐには見えません。入社したタイミングで私たちの仕事は終わりと思われるかもしれないですけど、そうじゃないんです。本当の意味での真価は5年先、10年先。その方が活躍して、会社も個人も成長していくシーンを見ることなんですね。

私も、ようやくです。この仕事をして20年してようやく、私がやってきたことの軌跡が見えるようになりました。

人材紹介に足を踏み入れたからには、辞めないでいただきたいです。いろいろあると思うんです。ずっと永遠に順風満帆に行くことはありません。新規参入したは良いんだけど、なかなか決まらないという声もたくさん聞きます。

「モリチさん、年収の35パーセントも取るのは高いんじゃないの」と言われたりもします。「左から右に動かしてるだけじゃないの?」と。

そう見えてこの世界に入られる方も多いんですけど、「言うは易く行うは難し」そんなに簡単じゃないんですよね(笑)。やればやるほど奥が深く、まだ正解は見えません。だからこそ、辞めないでいただきたいなと思います。

人は変われます。そういう人たちをたくさん見てきたんです。エージェントは、そこに関与できる仕事だと思っています。必要とされている実感があるだけで、人は変わるんです。

私もたくさん過去ご紹介した方からメールをいただいたり、奥様からお手紙をいただいたりすることもありました。本当に、人は変われると思っています。

今、生き方そのものを見直すタイミングが来ていると思っています。何のために仕事をしているのか、何のために働くのか、何のために生きているのか・・・?
そこを一緒に解を出していただいて、1人でも多くの輝く笑顔が見られたらと思っています。

「必要とされている実感があるだけで、人は変わる」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介ノウハウセミナー後編

寝る前の1パーセント、自分自身へ投資してください

――今日はお話をありがとうございました。求職者との面談や、求人企業との交渉もうまくいかなく、元気よく接することができない時ってあると思うんです。そんな時にも、最高のエージェントとして接するためのモチベーションを聞かせていただきたいです。


森本 そうなんです。求職者の方がいらっしゃった時に、エージェントがやる気のない態度で接してたら、多分相手の方は「この人を信頼して任せよう」とはならないと思うんです。

だから、大義が大事だと思うんです。私が、この仕事をしている大義は父にあります。脱サラをして起業家として苦労しながらも頑張っていた父の背中をずっと見ていたので、父への恩返しというつもりで中小企業を応援したい。一番苦労していた「人」の部分で応援したい、という思いで仕事をしてきました。その大義というのは忘れないでずっと持っています。

もう1ついうと、自分にとって楽しいとかワクワクするか、心地が良いか・・・自分にとってのポジティブなマインドセットがどういう環境やどんな人と一緒にいれば持てるのか、毎日意識するようにしています。

「寝る前の1パーセント、自分自身への投資」と言っているんですけど、24時間の1パーセントは15分です。その15分を、寝る前に必ず意識してほしいです。

一日あった中で楽しかったこと、嬉しかったこと、ワクワクしたこと、心が躍ったこと・・・そういうプラスのマインドが動いたタイミングを思い出しながら、15分ぐらい「あのことはすごくよかったな」と自画自賛する、自分を褒めてあげるという時間を持ってるんです。

そうすると、寝ている間に幸せホルモン「オキシトシン」がものすごい作用で分泌が進むんですね。朝目覚めた時の、心理状態が違うんです。

日本人は、反省が得意な国民なんです。寝る前に「ああしておけばよかった」とか「何であんなことしちゃったんだろう」と反省しながら寝る方が多いようなのですが、そうではなく、ポジティブなマインドセットで眠りにつくことで、朝の目覚めが違い、日々の過ごし方も変わってくると思います。まさに私が実践していることです。

いろんな選択肢がある中で今の仕事についていらっしゃったり、今日この場所にいらっしゃると思うんです。それもすべて自分で選んできているんですが・・・。
その選択によって、直感的に自分が進みたい方向に進むことができます。

毎日のルーティンを継続することで、私は日々自分から好む状態で計画的に人生の歩みを進めていると感じています。スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授がいう「計画的偶発性理論」というやつですね。

キャリアの8割は、偶発的出会いによって決定づけられます。そこを計画的に、目指す方向に持っていくことが大事です。計画的に動いていくために、自分自身の心地の良いこと、プラスのものは何かというのを知っておく。目指したいGoalは何なのか・・・。そう意識することと、プラスして「好奇心・継続性・柔軟性・楽観性・冒険心」をもって日々行動すれば、直感で選択した先に行きたい方向がシンクロすると感じています。

だから、何も落ち込むことがない。今起こっていることは、必然なんだと受け止められます。どんなことも無駄なことはありません。すべてが学び。捉え方を変えれば、きっと自分にとって必要なことが見えてくると思います。



ライター:澤山大輔

 

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