「何ができるか以上に、本当に何をやりたいか」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介立ち上げノウハウセミナー前編

 

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総務省統計局の発表する労働調査によると、2016年の転職者は306万人を超えました。全労働人口に占める転職者のパーセンテージは約4.8パーセント、これは概ね20人に1人が転職を経験するということになります。

もはや転職が当たり前の時代において、エージェントとはどういう存在であるべきなのでしょうか? 転職エージェントの先駆けであり、業界をリードし続ける存在である森本千賀子さん(株式会社morich)にお話を伺いました。

人の可能性を、伴走しながら見つける仕事

ご紹介に預かりました、森本千賀子と申します。26年前にリクルートに新卒で入社し、以後ずっと転職エージェントという仕事に携わっています。

私自身のキャリアは、ある意味日本の雇用環境を鏡のように映すものになっていると思います。当時見えた景色と現在とでは、だいぶ変わりました。今日は転職エージェントの歴史を振り返りつつ、この仕事が本当に人生を掛けるべきものかどうか、もう一度考えていただくような機会になればと思っています。

私がこの仕事をやろうと思ったきっかけは、父の起業です。私が小学生になる前ぐらいのことでした。彼の背中をずっと見てきましたが、滋賀県の田舎の中小企業なので本当に苦労していました。ヒト、モノ、カネで、とりわけ大きいのがヒトの不足だったんです。

時が流れ就職活動をしているとき、父の背中を思い出し「父を支援するような事業・ビジネスをしたい」と思ったんです。そのために、まずは中小企業を応援したいと思いました。日本の企業は、99.7パーセントが中小企業です。そのためにたどり着いたのが、リクルートの子会社でした。

26年間転職エージェントをやり、3万人以上の方にお会いしました。北は北海道、南は沖縄まで、大企業からスタートアップ企業様まで、4,000社を超える会社さまと関わらせていただき、2,000人を超える方の転職に携わらせていただきました。

その中で、私はいつも「エージェントとして、どんな価値提供ができるか」を常に考えてきました。それは、「人の可能性を、伴走しながら見つけること」です。

人は意外と、自分を客観視できないものですよね。好きな洋服、好きな色はわかっても、自分に似合うものはわかりにくい。自分では見えない可能性を、伴走しながら見つける。そんなことをミッションにして、やってきました。

何ができるか以上に「何をやりたい」か

キャリアのターニングポイントになったのは、2011年3月11日の震災です。

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私自身はテレビでしか見ていませんでしたが、大きなショックを受けました。「ある日突然、これが自分の身に降り掛かったら」と。そう思った時、自分は何のために仕事をしているのだろう? と思ったんです。

震災以降、転職のご相談に見える方々から要望されるメッセージも変わりました。「やりがい」「必要とされる場所」というキーワードが、このタイミングで大きく出てきたと感じています。

NHKさんの『プロフェッショナル 仕事の流儀』からお声がけをいただいたのも、この頃です。番組プロデューサーの方からも、同じようなキーワードが出ました。それまで、この番組はイチロー選手や本田圭佑選手など有名アスリート、アーティスト、お医者さん、職人の方など著名な方々にフォーカスされていました。そこに、名もない私に白羽の矢を立ててくださったのです。

プロデューサーの方に伺ったところ、やはり番組をご覧になる方のトーンが変わったと。この機会に改めて「働くこと」にフォーカスされている方に出演いただきたい、ということでした。

番組出演で一番喜んでくれたのは、同僚の仲間や先輩・後輩です。リクルートエージェントの仲間は、実家や故郷の友人から自分の仕事がどんなものか、どんな価値をもたらすのか、「番組を通じてよくわかった」と言ってもらえたそうです。本当に感謝されたことを覚えています。

番組で伝えたのは、「何ができるか以上に、何をやりたいか」ということでした。そこを実現していただくお手伝いをしたい。そういうメッセージをお伝えしました。

 

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あるアンケートによると、本当にやりたいことを実現できている人はわずか6パーセントということでした。寂しいと思います。同じように1日8、9時間を過ごすのであれば、ちゃんとやりがいを持ってほしい。私は、そういう場所を見つけるお手伝いをしたいと思います。

「いつか、日本も転職が当たり前になる」

『プロフェッショナル 仕事の流儀』に出演させていただいた頃から、日本の雇用システムも大きく変わり始めました。「人生100年時代」といった言葉も出てきて、今や『働き方改革』という言葉を見ない日はありません。

私自身もライフワークに目を向け、働くこと、キャリアそのものを社会人だけでなく小中学生に教えたり、NPOをやるなど兼業もスタートさせました。現在では当たり前ですが、当時では少し早かったと思います。

あるお客さんから、もっとコミットしてほしいということで、リクルートエージェントに居ながら自分の会社を立ち上げました。2017年のことです。これができたのも、転職エージェントをやらせてもらっていたからですね。自分の会社を立ち上げる際に、いろいろな業界のいろいろな職種の方とネットワークを作るうえで、自分の会社のメリットを持っているというのはすごくメリットがありました。

リクルートエージェントの中でも兼業・複業をやらせていただき、気がついたら自分の会社のほうでの仕事が増えたため独立、現在は「オールラウンダーエージェント」という肩書でやらせていただいております。

これは、転職エージェントをやっていたからこそのキャリアだと思います。人に向き合いながら、企業様に向き合いながら本質を追求していくと、いろいろな課題に当たります。そこを解決できるようなお抱えエージェント、困ったときにパッと駆けつけてミッションを解決する。そんな存在を目指そうと思っています。

先ほど父の話をしましたが、実はリクルートの子会社に新卒入社した理由はもう一つあります。就職活動をするタイミングで図書館で勉強していたら、たまたまスカウトに関する1冊の本が目に入ったんです。 

当時の日本は、終身雇用が当たり前です。最初に入った会社で勤め上げ、年功序列で真面目にコツコツ働く、収入は右肩上がり、キャリアもポストも年収も上がっていく。しかし、この本に書かれていたことは全く違いました。アメリカでは自分のバリューを、転職しながら上げていくのが当たり前であり、かつそれをバックアップする業界・会社がたくさんいると。

この本を通じてそれを知り、ピンと来たんです。「いつか、日本にもこういう社会が来るのでは」と。

こういう仕事をやっている会社はないか調べた結果、行き着いたのがリクルートの子会社でした。当時、わずか5,60人ぐらいの会社です。実は親会社の株式会社リクルートからも内定をいただいていたんですが、あえて子会社に入ったのはこの本を読んだことと、父のエピソードがシンクロしたことが理由なんです。

ところが当時、まだまだ転職はネガティブな時代でした。今も「嫁ブロック」とか言われていますが、当時は奥さんどころか親兄弟親族もみなが反対する時代でした。私が一生懸命サポートして10人内定が出ても、結果的に転職するのは1人か2人。そういう時代だったんです。

この20数年で、キャリアに対する価値観は大きく変わりました。常に「この場所で本当にいいのか」と皆が考えている時代になった。そう思います。

 

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ヤフーのロゴを見て「登山グッズの会社かな」と思った20年前

今、お客様から「指名スカウトをやってほしい」とよく言われます。要は、「***会社の○○部長を、ぜひ弊社にスカウトしたい。ただし、あまりにも近しい業界なので直接スカウトはしづらい。モリチさん(注:森本さんの愛称)、なんとかしてよ」と。

昔は、会うまでにすごいエネルギーが必要でした。電話をかけたりいろいろしても、会うことがかなわないということもたくさんありました。今は、100パーセント会えます。LinkedInとかMessengerとかいろいろなラインを駆使し、知り合いを通じていけば必ず会えます。

なぜかというと、やはり皆さんキャリアを考えていらっしゃるからです。「自分のマーケットバリューはどうか」「この場所で5年、10年と過ごすことが正解なのか」と。

戦後の頃は、組織の目標と自分の目標とがイコールでした。企業から言われたことをコツコツ真面目にやれば、ちゃんと定年まで面倒を見てもらえた。三種の神器と言われる、いわゆる終身雇用・年功序列・企業組合が生きていて、社員の満足度を支えていました。

今はそういう時代ではありません。私が就職活動していた頃とは、大きく景色が変わりました。

わずか20年前、私はソフトバンクさんの孫正義社長に呼ばれ、「アメリカのある事業を日本で展開したい。スターティングメンバーを採用したいから、紹介してほしい」と言われました。それが、ヤフーでした。初めてヤフーのロゴを見て「登山グッズの会社かな」と思ったぐらいです。ホワイトボードに、一生懸命インターネットという概念、思い、可能性を説明いただきました。でも、検索エンジンって聞いてもなんのことだか分からないわけです。クルマのエンジンなのかな? と思ったり。

これが、わずか20年前です。もはや、インターネットを使わない生活は考えられません。今はソフトバンクさんも通信キャリアの会社になり、現在はビジョンファンドとしていろいろなところに投資しています。今後も、業態は変わっていくでしょう。

私が就職活動していた頃にあった会社は、社名も変わり、業態も変わりました。垣根がなくなり、今やすべてがインターネットで繋がる時代になりました。ちょっと前まで当たり前だと思ったことが、ものすごい勢いで陳腐化していく。価値がすごいスピードで変化する。ということは、「変わらない」ということがリスクになる。そういう時代じゃないかなと思います。

 

後編へ続く

ライター:澤山大輔


 

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