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人生の大半の時間を占める仕事をどうしていくかは、誰にとっても一大事です。だからこそ就職や転職は大きな転機になり、慎重になってしまう人もいます。
総合人材サービスを提供する株式会社コンパスの長谷剛代表取締役社長は、転職を考えるきっかけは「なんとなく」でもいいと断言。
同社の強みは、「相談のハードルが低く、気軽に相談できるのに、気が付けばキャリアの方向性が定まっている」というキャリアコンサルティング力。
驚くべきは、入社後の早期退職ゼロを実現している点。
「人材紹介業はファンビジネス」と話す長谷さんにお話を伺いました。
むしろ工数を!デパート型エージェントと真逆の戦略
ーーまずは御社の特徴、特に求職者を対象としたキャリアコンサルティングについてお話しいただけますか?
長谷 他のエージェントとの違いですよね。主に大手のエージェントと比べた時にいえるのは、私たちは「主流とまったく逆を向いて」人材紹介業を行っているということです。
まずは何が主流かを説明しないといけませんね。どういうことかというと、大手のエージェントのほぼすべては、デパート型のエージェントなんです。商品(求人)はたくさん並んでいますが、実際のところ、成約平均単価を気にせざるをえず、また、「業界特化型エージェント」「 AI を駆使して自動求人提案」といった最新ワードのキャッチコピーが並んでいます。
すべての意味でコンパスはその真逆だと思ってもらえるとわかりやすいかもしれません。
ーー真逆とは具体的にどのようなことでしょうか?
長谷 世の中のエージェントの多くは、求職者を一人の人間として見つめる間もなく、採用企業側の条件に当てはめる“人材”として扱い、ランク分けしたり、条件に合わなければリリースするわけですよね。いとも簡単に。そうなるともう面談すらしてくれない。私も大手のエージェントに所属していたこともあるので、なぜそうなのかということも含めて現状はよく理解しています。
AIの話でいえば、求職者一人一人にかける人や手間、時間を減らした方が単価は上がります。テクノロジーを使うことにはメリットもありますが、それがすべてではありません。
私たちは、できるだけ工数をかける。いわば、アナログのエージェントなんですね。もちろん傾斜はかけますけどね。
ーー傾斜というと、面談していくなかで選別していくということですか?
長谷 入り口のハードルは全然低くていいと思うんです。「今の仕事合っていないかも」とか、「周りが転職活動しているから」とか、「なんとなく」でも全然いい。
ただ、転職活動自体はリスクだというところから始まるんですよ。その点を最初の面談で丁寧に説明した上で、「転職しない方がいいんじゃないか」ということもやっぱりあります。そのため、無理に求人票を見せて勧めたりはしませんし、いいことばかり伝えて入社させるようなことは絶対にしないですね。それも含めて気軽に相談できるようにしています。
私たちの会社は、2019年に設立された会社ですが、創業以来、早期退職(入社して数ヶ月で退職)なしできています。そこにすべてが凝縮されているような気がします。
ーー初めは知識もなく、手探り状態で転職活動をはじめる人もいますもんね。
長谷 メリットもリスクもきちんと伝えた上で、転職したいという人は“応援”するんです。仕事を紹介するというよりは本当に応援ですね。
傾斜をかけるといいましたが、その基準はこちらに対してロイヤリティがあるかどうか。それだけです。私たちのサポートを必要としているかどうか。
私はエージェントの側から、実力があるかないかという判断をするべきではないと思っているんです。求職者が求める限り、私たちは仕事を探さなければいけないミッションを担っていると思っています。
ーー主流側のエージェントはそうじゃない?
長谷 主流というか、世の中のエージェントのほとんどが右向け右みたいな形に見えるわけなんですけど、あえて我々は逆行しているんです。そこに私たちのような規模のエージェントが勝ち残っていくための戦略があると思っていて、デパート型のエージェントに対して、一人ひとりに時間をかけてこだわっていくセレクトショップ型のエージェントのやり方を実践しています。
ちょっと大きな話になっておこがましいですが、個人的に大小含め2万5千~3万社あるといわれている人材紹介業界がこのまま健全に発展していくのかというところは、長年携わってきた者として不安に思っているんです。自分も経験してきたことですけど、どうなのかな? と思うやり方をあまりによく聞くんです。これだけ多くのエージェントがあって、そこに所属するコンサルタントがいるわけじゃないですか。その人たちが本当にこの仕事に生きがいを持ってやっているのか? 自分たちが主流とは真逆のことをやっていくことで、業界のイメージを少しでも上げていきたいという思いはあります。
ベルトコンベア式で案件と人材を流していくやり方に疑問
ーー大手に所属されていた経験もあるとのことですが、その頃は矛盾を抱えながらお仕事をされていたのでしょうか?
長谷 リーマンショック前後に、営業職の大量採用のプロジェクトリーダーをやっていました。年間100名採用するような案件を集めて一括で推進していくようなプロジェクトですね。ベルトコンベア式で、なるべく自動的に案件が進んでいくための仕組みですよね。そこには求職者の希望や背景、キャリアへのビジョンは関係なし。会社の方で指示があって求人案件を消化していくみたいな仕事でした。
ーーそこに違和感があったわけですね。
長谷 ほぼ応募承諾をとっていくだけという感じでした。虚しさを感じてはいましたが、企業戦士ですからね(笑)。数字を上げなければいけないので割り切ってやっていたというところはありました。
その後、医療分野に興味を持ち、立ち上げ期のサーチファームに転職しました。そこは規模的にも自分の手が行き届くというか風通しもよかったので、業務事態が大きく変わったかといわれればそうでもありませんが、自分でコントロールできることが多い分、ストレスはなくなりました。
ーーそこから独立されてコンパスを創業されるわけですが、やっぱり自分でやらなきゃいけないという思いがあったんですか?
長谷 もともと独立志向はあまりなくて、周囲から「長谷さん独立しないんですか?」という声をいただく機会が増えて、それがきっかけでしたね。独立した方が面白くないですかといわれて、自分でもこの業界でやりきるなら独立しないともったいないなと動き出したんです。
この業界に入ったのも33歳と遅かったので、そこからは早かったですね。時間がないと思っていたので。
29歳で司法試験に挑戦。異色の経歴が生む顧客起点の人材紹介
ーー33歳で人材紹介業にということですが、それまでの経歴もユニークですよね。
長谷 新卒で入ったのは、クレジットカードの会社でした。29歳までいたんですけど、当時は自分が何を求めていたのかわかっていませんでしたね。
ーーその後、司法試験に挑戦されています。
長谷 祖父が弁護士で、家系的に法曹界と縁があり、私もたまたま法学部だったので(笑)、4年半、3回受験限定という約束を家族として司法試験受験をしました。
信販業務とリーガルマインド、人材紹介業はこれをくまなく使っていく業界だと思っているので、無駄な時間を過ごしたとつもりはまったくありませんし、色々な経験を経て今があるなというのは思います。
ーーそういう経験が、求職者や、転職を「なんとなく」考えている人との接点になっている気がしますね。
長谷 それは意識したことはなかったですが、言われてみれば同じ目線で話をできるというのはあるかもしれません。第二新卒だと、26、7歳が多いのですが、その年齢で「軸が定まっていない」とか「キャリア設計が見えない」とかって私は当たり前だと思うんですね。
新卒の時の自分もそうですけど、子どもの頃、学生時代だって、周りの様子を見ながら意思決定してきたかなと思うんです。
思えば、家を買うのも、車を買うのも、高級な時計、鞄、靴を買うのも、周りが持っているからみたいな消費者心理があるじゃないですか。転職するのもまずは理屈ではなく、そんな感じで動いてみてもいいのかなとはいえますね。
建前から本心を引き出すのがプロ。面接対策ではなく、言語化をサポート
ーーそこから、転職活動を通じてキャリアを考えたり、将来のビジョンについて考えたりしていくように促しているんでしょうか?
長谷 面接で「なんとなく」とか「周りが動いているので」とはいえませんよね。企業側も面接では本音を言わないのでイーブンだとは思いますが(笑)、面接に曖昧な志望動機は持ち込めないので、求職者の「なんとなく」から本音ベースで志望動機を引き出すのが私の役目かなと。
ーー一過性の面接対策ではなく、自分でも気づいていない本音や志望動機、仕事への思いを引き出すということですよね。
長谷 ウソはダメなんです。ウソになった瞬間に綻びがでるし、ウソで入社しても長続きしません。だけど、建前の中にも本心はにじみ出てくる。それを引き出すのはプロじゃないと無理だと思います。
最初は、ヒアリングした情報に従って、私が転職理由、志望動機を話してみるんです。その人に成り代わって。それを聞いた求職者が「それ本当に私、思ってました」とか「なんでわかるんですか?」という場面が結構あるんです。みんな言語化するのに苦労しているだけで、何も考えていない人なんていないんです。言葉をつくってあげることは、エージェントとしてすごく大事だと思っています。
すべての人の羅針盤に。株式会社コンパスが目指す新たな可能性
ーー転職者の多くは、何のガイドもなくやってくるわけですもんね。そういう意味では、企業名のコンパス=羅針盤はまさにピッタリの名前ですよね。
長谷 本来は、教育分野、アカデミックなところもやっていきたいんですけど、もっとライトに相談してほしいんですよね。知り合いに相談する感覚で来てもらって、それが好評でファンがもっと増えていけばいずれは組織的に人材教育につながるような仕組みを構築できればとは思っています。業界全体のお話もしましたが、やりがいを見失っているコンサルタントのコンサルタントみたいなことにも挑戦したいですね。
ーーロイヤリティやファンというキーワードがでましたが長谷さんがやっているのはまさに顧客起点のファンビジネスですよね。
長谷 求められる限り応援する、求職者にしても求人企業にしても、顧客ではなくコンパスのファンになってもらうという点ではそうかもしれませんね。
ーー最後に、今後の目標を聞かせてください。
長谷 人材紹介業は、究極のマッチングビジネスだと思っているんです。人×企業なので今は人材ですけど、色んなものを掛け合わせられる可能性があるんじゃないかと。私たちは何かと何かを出会わせるプロ。これをいろんな方面でやっていきたいなという構想を持っています。
ーー貴重なお話をありがとうございました。
ライター:大塚一樹
人材紹介会社向けのサービスを提供して17年、5,000名超の立ち上げを支援してきたCrowd Agentが、失敗しないための事業戦略をお伝えします。
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