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人材紹介業で使用する契約書の作成方法について解説します。契約書は求職企業と求職者をつなぐ大切な書類であると同時に自社にとっても非常に重要な書類です。自社にとって不利にならない契約書の作成方法を学びましょう。
- 不備のない契約書で人材紹介会社を営む
- 人材紹介の契約書に盛り込む7つの項目
- 人材紹介事業で契約書を作成する注意点
- 人材紹介業で契約書以外に必要な書類
- 人材紹介業で契約を成立させるポイント
- 自社にあった内容の契約書で人材紹介業
不備のない契約書で人材紹介会社を営む
人材紹介会社と求人企業で取り交わす契約書には、記載すべき内容と注意点が複数あります。法的な関わりが出てくる項目もあるため、しっかりと確認しておきましょう。
契約書に不備があると、自社にとって不利な状況になるケースもあります。テンプレートやフォーマットを利用しながらも、自社独自の契約書が作成できるよう時間をかけて精査することも大切です。
この記事では、人材紹介会社で使用する契約書の作成方法と、作成時の注意点について解説します。契約書以外に必要となる書類や、集客方法についても解説しますので参考にしてみてください。
人材紹介の契約書に盛り込む7つの項目
人材紹介を行う場合、求人企業と契約書を交わす必要があります。契約書の内容については、法的な点からも厳しくチェックが入る可能性が高いので精査する必要があります。ここでは、人材紹介の契約書に盛り込む7つの項目について解説します。
契約により行う業務内容
最初の項目は、契約により行う業務内容についての記載です。人材紹介業者が行う業務は、人材採用に関するコンサルティングや人材紹介業務となります。求人企業から委託されて、自社が受託した旨を契約書に明記する必要があります。例文は以下のとおりです。
例文:株式会社○○(以下「甲」という)と、人材紹介業者○○(以下「乙」という)は、甲の人材採用に関して、甲の乙に対する人材紹介業務の委託を目的として、下記のとおり契約する(以下「本契約」という)。
第1条(委託事業)
甲は乙に対して、甲が必要とする人材の採用に関するコンサルティング及び人材紹介業務を委託し、乙はこれを受託する。
報酬に関する取り決め
次に必要となるのは、報酬に関する取り決め内容です。報酬については、どの時点で報酬が発生するのか、請求方法、支払い方法、報酬額に加えて報酬額を見直す際の条件などについてを明記する必要があります。報酬額については、契約書とは別に「覚書」を作成して定めておくと安心です。
求職者に対する報酬額の相場は、雇用契約を結んだ時点での年収の30〜35%程度とされています。報酬額の変更については、最初に交わした業務内容にさらに業務が追加された場合や労働時間の変更があった場合などに行われます。具体的な変更方法や内容について、契約書に明記しておくことが大切です。
返金の扱い
契約を交わした後で、求職者が自分の都合で退職を願い出るケースもゼロではありません。さらには、業務に関する内容で求職者が責任をとって解雇されるケースもあります。この場合は、人材紹介会社が求人企業に対して報酬を返金する必要が生じます。
返金額については入社辞退、退職、解雇を理由とした返金で、退職までの期間によって金額が変動します。具体的には以下が目安となります。
入社後1ヵ月未満の場合=報酬の100%
入社後1ヵ月以上3ヵ月未満の場合=50%
入社後3ヵ月以上6ヵ月未満の場合=20%
ただし、求人企業が求職者に実際に提示した業務内容が契約内容と著しく異なる場合には返金しなくてもよいケースもあります。契約書には返金をしない条件についても記載しておきましょう。
双方での情報の取り扱い
業務を行う上で、必要となる資料や情報についての取り扱い方法に関して、双方できちんと取り決めを交わし契約書に記載しておくことも大切です。まず採用決定の通知方法について、採用が決まった求職者への資料提供の方法、これらについて明確にしておきましょう。
さらに情報化社会において特に重要視される点が機密保持に関する契約です。求人企業が抱える情報を外部に漏らすことがない旨もしっかりと記載しておきましょう。ちなみに契約が終了した後も知り得た情報を第三者に開示することをしてはならない旨も記載が必要です。
契約書の有効期限
契約書が有効となる期限についても記載しておく必要があります。「本契約の有効期間は令和○年○月○日から令和○年○月○日までの○年間とする」というように、具体的な日付を記載しましょう。契約年数を明示しておくことも大切です。
有効期限については、更新されるかどうかについても記載が必要です。更新が自動更新である場合には有効期限が満了する何日または何ヶ月前までに手続きを取る旨を記載しましょう。人材紹介会社または求人企業のどちらかが相手に対して契約内容の変更や契約更新を行わないという旨を書面で通知しない限りは、同じ内容の契約が自動的に更新されるという条件を入れておく必要があります。
トラブルが起きたときの対処法
人材紹介会社と求人企業との間で、契約に関してトラブルが起きた場合の対処法を具体的に示しておくことも大切です。これを「合意管轄」と呼びます。例えば、都内での契約であるならば「本契約に関して紛争が生じた場合には、東京地方裁判所を第一専属的合意管轄裁判所とすることに合意するといった一文を記載しましょう。
契約書に記載されていない事由によってトラブルが生じた場合には、「協議」を行うことで解決を図る旨を記載することも必要です。その際、「双方が誠意を持って円満に解決すること」と示しておくとより安心です。
契約を交わした日付と契約者
契約書の最後には契約を交わした日付と契約者の住所、会社名、代表者名を記載する欄を作成します。その際、求人企業の欄を先に作成し、その下に人材紹介会社の記入欄を作成する方法が正式です。捺印の欄も忘れずに作成しておきましょう。契約書を交わす際には、事前に自社の欄には記入をして捺印しておく必要があります。
人材紹介事業で契約書を作成する注意点
人材紹介会社を経営する上で、契約書を正しく作成し保管することは重要な業務です。内容に不備のない契約書が作成するためにはいくつかの注意点があります。ここでは、契約書を作成する上で注意しておきたいポイントについて解説します。
契約書は2部作成して双方で保管
契約書は必ず同じものを2部作成します。その旨を契約書にも記載しておきましょう。例えば、「本契約成立の証として、甲乙は本契約書を2通作成し、各自記名捺印の上、甲乙がそれぞれ1通を所持する」といった文言を記載します。
2部作成する理由としては、1部だけの場合その書類を保管する側が文書を改ざんする恐れがあるからです。互いに同じものを保管しておけば万が一改ざんが行われた場合でもどの部分が変えられたのかがひと目でわかります。さらに互いに同じ書類を保管していることがわかっているので改ざんが起こりにくいというメリットもあります。
契約書での印紙の取り扱い
人材紹介会社と求人企業の間で交わされる契約書に、印紙を貼る必要は基本的にはありません。収入印紙は納税が必要な書類に関してのみ必要となります。契約書に収入印紙を添付して消印をすると納税した証明となります。
「印紙税法」では、請負の業務に関連した契約書の場合は課税文書であると定めています。人材紹介業は請負ではなく委任に関する契約書として取り扱われるため不課税の書類と考えて問題ありません。
求人者との契約なくても求職者の紹介は可能
人材紹介事業を営む会社が自社で受理した求人または求職をあらかじめ特定された人材紹介業者に提供することを業務提携と呼びます。業務提携による人材紹介の場合は、求人企業と契約を結ばなくても求職者に仕事を紹介することができます。
人材紹介業で契約書以外に必要な書類
人材紹介事業を行うには、求人企業と取り交わす契約書のほかにいくつか用意して置かなければならない書類があります。ここでは契約書以外に必要な書類について解説します。
職業安定法を満たした求人票
求人票は、求人企業が必要とする人材の条件や雇用条件についてが記載された求職者向けの募集要項です。求職者に対して求人を案内する場合には、この求人票が必須となります。
求人票は「職業安定法」によって規定された、記載必須項目と記載負荷項目があります。記載必須項目と記載負荷項目以外については求人企業が独自で記載しても問題ないため企業アピールのために記載している企業も多くあります。
求人票に最低限記載して置かなければならない項目は以下のとおりです。
- 労働者の業務に関する内容
- 労働契約期間
- 就業場所
- 就業時間、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日
- 賃金
- 健康保険、厚生年金、労働者災害補償保険および雇用保険の適用有無
これらについては必ず記載する必要があります。逆に書いてはいけない項目は以下の通りです。
- 性別を限定する内容の表現
- 年齢を限定する内容の表現(一部、例外はあり)
- 最低賃金以下の給与
求人票を確認する際にはこれらの内容に注意しておくことが大切です。
企業に発行してもらう内定通知書と労働条件通知書
求人票の次に必要となる書類が、企業に発行してもらう内定通知書と労働条件通知書です。特に労働条件通知書は、労働基準法によって企業が作成することが義務付けられている書類となります。厚生労働省のホームページには労働条件通知書のフォーマットがあるため求人企業が作成に手間取ることがあるようなら紹介してもよいでしょう。
労働条件通知書には、絶対的明示事項と相対的明示事項の2種類の項目があります。絶対的明示事項は、文書にして労働者に交付する必要がある内容で、以下の5つとなります。
- 労働契約期間
- 業務内容と就業場所
- 始業時間、終業時間、所定の労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交代勤務制について
- 賃金について(計算方法、支払い方法、支払いの時期)
- 退職について(解雇自由についてを含む)
相対的明示事項は文書にしなくても口頭などで明示することで問題ないとされている内容です。以下の9項目が該当します。
- 昇給について
- 退職金について
- 臨時報酬、賞与について
- 労働者が負担する食費や作業用品その他に関する内容
- 安全衛生について
- 職業訓練について
- 災害補償、業務外の傷病扶助について
- 表彰や制裁について
- 休職について
e-Govで手続きが可能な書類一覧
e-Govとは、電子申請のシステムの名称です。書面で行われている申請や届け出などの行政手続きをインターネットを利用して行えるようにしました。各府省が所轄する多様な行政手続きについて簡単に申請や届け出ができるため便利です。
人材紹介業に関してe-Govで手続きが可能な書類は以下のとおりです。
- 事業の許可申請
- 事業の許可の有効期限の更新手続き
- 事業に必要な手数料額の届け出と変更
- 事業の許可証の交付申請
- 事業の変更届け
- 事業の変更届けおよび許可書の書換え
- 取り扱い職種の範囲などの届け出
- 事業廃止の届け出
- 事業報告書の提出
人材紹介業で契約を成立させるポイント
人材紹介業の市場規模は2019年時点で3000億円とされています。この数字だけ見るとわかりにくいですが2010年時点で900億円だった市場規模がおよそ9年の間に3倍以上に成長しています。
このような成長市場で業績を上げていくためには、契約を成立させることが必要不可欠です。ここからは契約を成立させるためのポイントについて解説します。
求職者との信頼関係を築く
求職者は少しでも条件のよい職を求めています。まずは求職者の希望にしっかりと耳を傾けて相手の心を開くよう心がけましょう。
求職者がどのような仕事を探しているのか、相手の希望をしっかりと汲み取ろうという誠実な姿勢は相手にも伝わります。また笑顔を心がけることも大切です。ただし、心から相手を思う笑顔でなければ信頼を得ることはできません。
笑顔で聞き手に徹して相手が居心地がよく話しやすいと感じる空間を作り上げていくことも大切です。その上で求職者との信頼関係を徐々に築いていきましょう。
メディアを運営して集客
人材紹介事業を行う上で集客は重要な業務です。最近ではメディアを活用した集客も注目されています。たとえば、自社のホームページを作成することもひとつの方法です。自社の特徴や強みがよくわかる内容のコンテンツを作成することで求職者が求める価値を提供しましょう。
さらにオウンドメディアからの流入を増やすことも集客アップにつながります。そのためにはSEOを意識したコンテンツを作成する必要があります。ユーザーが検索するであろうワードを意識してターゲットを絞ったコンテンツの作成が求められます。
ターゲットをすぐに転職したい人に絞るか、時間をかけて転職を考えている人に絞るかでも内容が変わってきます。
人材紹介業向けの求人データベースと契約
人材紹介事業の運営がはじめての場合、求人データベースと契約するのも集客を成功させるひとつの方法です。人材紹介業向けの求人データベースではデータベースの利用だけでなく業務管理に関するシステムのノウハウや人材紹介のコツについてを学ぶこともできます。
人材紹介会社向け求人データベースのクラウドエージェントは、常時3000件以上の求人データを利用することが可能です。求人企業と直接契約をしなくても利用できる点は大きなメリットです。
さらに業務支援としてシステムの効率化をサポートしてくれたり、専任のコンサルタントが求職者とのやりとりについてのノウハウを提供してくれるサービスも用意されています。無料セミナーに参加するなどすればさらに知識を身につけることができるでしょう。
参考:クラウドエージェント
自社にあった内容の契約書で人材紹介業
人材紹介会社で使用する契約書にはさまざまな内容を明記する必要があります。契約書の作成に慣れないうちはテンプレートやフォーマットを利用するとよいでしょう。ただし、内容をそのまま使用するのではなく自社にとって不利益が生じない内容になっていないか丁寧に確認しながらオリジナルの契約書を作成することが大切です。
人材紹介会社は求人企業と求職者の両者からの信頼を得て成り立つ仕事です。契約書ひとつにおいても自社の利益と同時に相手の立場も考えた内容で作成することを心がけましょう。
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