人材紹介応援ブログ|クラウドエージェント

求人データベース「クラウドエージェント」がお届けする人材紹介のノウハウです

「ミッションを忘れないでほしい。エージェントの価値とは何か?」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介立ち上げノウハウセミナー後編

転職が当たり前の時代において、転職エージェントはどういう存在であるべきなのでしょうか? 20数年間にわたり業界をリードしてきた、転職エージェントの先駆けである森本千賀子さん(株式会社morich)。前編に続き、後編では「エージェントの価値」を中心にお話を伺いました。 

「ミッションを忘れないでほしい。エージェントの価値とは何か?」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介立ち上げノウハウセミナー後編

 

エージェントは、生き方を提案する必要がある

昔は、正社員でなければ応募が集まらない時代がありました。

契約社員なんて言ったら、誰も応募してくれなかった。今は、私がエージェントとして担当する方の中でも「業務委託」や「顧問」という形でご紹介させていただくケースが増えました。それぐらい、雇用形態にはこだわりがなくなったんですね。

働く環境もそうです。ひと昔前は首都圏、それも山手線沿線じゃないと応募も集まりませんでした。ところが今は地方、例えば軽井沢と本社と半々で仕事をしているという方もそこまで珍しくありません。在宅、リモートワークなどが選べる時代になりました。

5年後、こうした環境はより当たり前になっていくと思います。そうなると皆さん考えるわけですね、「自分にとって本当に最適な選択肢って何だろう」って。実現したい人生を叶えるためにどんなワークスタイル、ワークプレイスを選択すればいいのか。

エージェントは、それをちゃんと提案しないといけません。求人だけを提案すればよかった時代から、生き方を提案する時代へ。それぐらい、エージェントの価値は変わったと思います。

ターニングポイントとなったのは、2000年の規制緩和です。昨年も大きな規制緩和が起こり、人材マーケットに他業界からどんどん参入が起こりました。

人材マーケットは、リーマンショック以降ずっと成長し続けているマーケットです。ずっと晴れマークがついています。事業者数は約2万2千社超、コンビニと並ぶほどになっています。

私がこのビジネスをやろうと思った頃は100社もなかった時代ですので、200倍以上になっています。この人材紹介マーケットのことがテレビドラマの舞台にもなり、小説にもなる時代となりました。古巣のリクルートキャリアでも、今は毎年ものすごい数の応募が来ます。

一方で労働市場では、少子高齢化が進んでいます。労働力は落ち、求人倍率は昨今バブル期を超えています。人手不足で、どこに行っても求人がある状態。そういう中、どうやって自分たちの望む人を採用していいか分かりづらくなっています。

新しいHR企業も、どんどん台頭しています。私が業界に入った時は、リクルート社かどこか、せいぜい3社か4社ぐらいしか選択肢がありませんでしたが、今や、求職者のデータベースも開放されています。私が転職エージェントを始めた頃、独立する際には何よりも求職者個人とのネットワーク、人脈がないと始めようにも始められなかった時代、何より大事だと言われていましたが、その個人のデータベースが開放されているんです。

転職マーケットにも、変化が表れています。2007年から2017年までの10年間を見た時、リクルートキャリア、インテリジェンス(現パーソルキャリア)、それからJAC、この大手3社における決定数のシェアはダウンしているんですね。代わりに、中小エージェントでの決定数は17パーセント伸びています。

昔はどの企業に登録するか、どの企業でサービスを受けるか、でしたが、今は「誰に相談するのがいいのか」という「個」の時代に突入しました。いかに求職者に寄り添い、信頼を得られるかに尽きると思います。  

この仕事の真価は、入社後に見える

これから業界を目指す方は、エージェントの価値は何なのか、突き詰めて考えてほしいと思っています。

私が1人でやれることは、限られます。ですが、私を通じて転職された数千人の方が、培ってきたキャリアやスキルを発揮して、持てる潜在的なポテンシャルを開花させられる場所に行くだけで日本の国力は格段に上がると思っています。

 

仲間を増やしたいです。同じような思いで社会に向き合う真の転職エージェントを、1人でも多く生み出したいと思っています。

私がなぜ飽きもせずこのビジネスに向き合っているかというと、求職者の皆さんの大きなターニングポイントに向き合う仕事だからです。

大学進学、社会人になる、そして結婚や出産と同じように、転職はその方にとってターニングポイントです。転職を通じて大きく人生が変わった方を、たくさん見てきました。価値のある仕事だと思っています。

私たちの仕事の真価は、マネタイズによって発生するのではありません。入社がゴールなのではなく、スタートなのです。いかにその方が転職先でチカラを発揮され、企業が成長していくか。ここがわれわれにとっての真の価値だと思います。

ゆえに、すぐに価値は見えないと思うんです。ここ最近、ようやく私のやってきた価値を認識できるようになりました。皆さんにも、いずれそうなってほしいです。すぐには辞めないでもらいたい。真の価値を体感してほしいと願っています。

志と情熱をもってこのビジネスに足を突っ込んだなら、ぜひ覚悟をもって進めてほしい。皆さんが関わった方がどういう人生を過ごされ、関与した会社がどう変わっていくのか、ぜひ皆さんの目で見ていただきたいと思っています。

「ミッションを忘れないでほしい。エージェントの価値とは何か?」森本千賀子(株式会社morich)〜人材紹介立ち上げノウハウセミナー後編

このマインドセットを、忘れないでほしい

例え話として、あるサンタクロースの絵本の話をします。

そのサンタクロースの絵本には、サンタクロースのAチームとBチームの話が書かれています。Aチームには「クリスマスになったら子供たちにプレゼントを間違いなく効率的に届けること」というミッションが、Bチームには「子供たちにプレゼントを届けて子供たちを笑顔にすること」というミッションがそれぞれ与えられます。

プレゼントを届け終えた時に、どちらが「よし、来年も頑張ろう」と思えるか。Bチームのサンタクロースは、きっとどこにプレゼントを置こうか、本当に笑顔になってくれているか、場合によっては子供たちの笑顔を翌朝実際に確認しに戻っているかもしれない。

子供たちが喜ぶ顔を見ながらどこか温かい気持ちになって「良い仕事をしたな、来年も頑張ろう」ってきっと思う気がするんですね。

人材ビジネス、転職エージェントにおいても同じです。「存在価値は何なのか?」「何のためにやっているのか?」。そのミッションを忘れないでいただきたいのです。ともすると数字を追いかけることに一生懸命になり、ミッションを置き去りにしがちです。でも、何のために仕事をしているのか? そこをブレずに持っていれば、道に迷うことはないと思います。

私の大好きな「アンパンマンのマーチ」にも、「自分は何のために生まれたのか」という一節が出てきます。何のために生きるのか、何のために仕事をするのか、そこにしっかり向き合ってほしいと思います。

なぜ私がこんな暑苦しい話をしたか、マインドセットの部分です。私が20数年間忘れずにいたのは、ここなんです。うまくいかないことがあっても道に迷うことなく進んでこられたのは、このマインドセットを常に大事にしてきたからだと思っています。

ノウハウ、ナレッジ的な話は次回開催するイベントで改めてお話をさせていただきます。皆さん、今日はお忙しい中ありがとうございました。以降は、質疑応答に移らせていただきます。

キーワードは「皆がやりたがらない領域」

――一番お金と時間を投資すべきところは、どこだとお考えでしょうか?

森本 何よりも差別化できるのは、求職者側のデータベースに尽きると思います。すぐにネットワークや人脈が作れるわけではないので。投資すべきは求職者とのネットワーク、人脈だと思います。

その中でも各社さん特徴が違いますから、それぞれの特徴をきちんと見極め、どこのマーケットにフォーカスするか決め、まずは一社としっかり繋がっていただくのが重要です。

転職エージェントは2万社ありますから、同じデータベースを作るだけでは差別化に繋がりません。独自の求職者データベースを作ることが重要です。ここは本当に地道な努力が必要で、例えばイベントに顔を出す、1人の方が転職成功しなくてもその方から2、3人と紹介いただく関係性を作る、そういったことに尽きると思います。

 

――これだけ人材紹介会社が多い中で、求職者の独自のネットワーク以外に差別化を図る方法はありますか?

 

森本 全方位でなく、どこかの業界にフォーカスすることが一つ。もう一つは、成長ステージにフォーカスするということですね。

スタートアップから始まりIPO前後、それ以外にもM&Aをするタイミングもありますから、成長ステージにおいてどこにフォーカスし、強みをブランディングしていくか。そこを決めて、人脈やネットワークづくりをしていただければと思います。

私自身は20代の頃、皆があまり獲得に行かなかったまさにマイノリティの流通業界にフォーカスしました。いわゆる3Kと呼ばれる、キツイとか厳しいとか言われたところです。そこの人材獲得と求人獲得を、2年ぐらいかけて行なったことが今の自分を形作っていると思います。

その後に取り組んだのはベンチャーのマーケットで、当時はソフトバンク社や楽天社、サイバーエージェント社がクライアントでした。今でこそ名だたる企業ですが、当時はまだ「よくわからないリスクのある会社」として見られていました。そういうベンチャーマーケットにフォーカスし、自分のブランドを作っていきました。

ひょっとしたら、キーワードは「皆がやりたがらない領域」「ちょっと手間がかかる、難易度の高い領域」、いわゆる『逆張り』かもしれません。

――モリチさんが今からチャレンジしたい領域、皆が手を出さなそうだなと思う業界はどのあたりですか?

森本 オーナーカンパニーのいわゆる中小企業ですかね。転職エージェントをまだ使ったことのない、場合によっては山手線沿線でもないドーナツを外れたところです。

実は、そこも私のお客さんがすごく多いんです。もしかしたら、空いている市場なのかもしれません。

地方も狙い目だと思います。私自身実はフィーの設定に関して、地方だとエネルギーの投下が必要になるので高めに設定しているんですが、一社からも「割引してほしい」と言われたことがないんです。

かつ、本当にパートナーシップを締結すればエクスクルーシブ、「モリチさんだけとお付き合いする。他のエージェントに浮気はしない」と言われて独占契約ができたりするんですね。「あなたから紹介された人は、優先的に会うよ」と言ってもらえる、そういう意味でも地方のお客様は有望なのかなと思っています。そして何より、地方を元気にするのは、私自身のライフワークにも通じます。自分のやりたいWillを実現できるようなマーケットであれば、多少苦労があっても乗り越えられるものだと思っています。

ライター:澤山大輔